イエスは革命家(人間)か、それとも救世主(キリスト)か!?

「実際のイエスは、ローマ帝国に反抗した暴力も辞さない革命家(ゼロット)だった。しかし死後、切迫した歴史的事情から愛と平和を説いた救世主(キリスト)というイエス像に書き換えられたーイエスの実像とキリスト教誕生の核心に迫った本書は、全米で20万部超の大ベストセラー。何が史実から落とされ、何が捏造されたのか?実際のイエスはどういう人物だったのか?何を説いたのか?それがどう変質して世界宗教が誕生したのか?興味をそそる謎が次々に解き明かされる。」文芸春秋社発行のレザー・アスラン著『イエス・キリストは実在したのか?』の図書広告を年刊誌上で読んだわたしは、自身の心音が高鳴るのを覚えた。
一方、仏教の中心人物である釈迦の場合、結婚後に自分の子供をもうけてから何年か経過した、29歳の時に出家し、その後6年の苦行を経て悟りを開いた、という話は、疑う余地もなく歴史的事実であるように思う。
それに対し、ナザレのイエスの場合、まったく対照的な二つの説に分かれている。(※)
一つは、イエスの処女降誕と復活という奇蹟をそのまま信じて、イエスを「神のひとり子」として神格化する説であり、もう一つは、この二つの奇蹟をすべて否定して、イエスを革命家などの社会活動家であったとみなす説である。これらの対立する二つの説については、結論を出せないまま現在に至っている。
最初に引用したイスラム教徒のレザー・アスラン氏の考え方は、後者の立場に属しているが、果たして、100%そのように断言していいものであろうか、はなはだ疑問である。
「イエスはキリストである」と信ずる、キリスト教諸教会の指導者の多くは、「イエスの復活」信仰を土台にして宣教活動を行っていると言っても過言ではない。わたしは、真偽のほどをまったく客観的に証明できそうにもない「イエスの復活」を信じる既存のキリスト教諸教会から分離・独立し、「処女降誕教」の創始した者である。「マリアの処女懐胎によるイエスの誕生」が、歴史的事実であるのか、それともただのフィクションなのか?この二者択一の謎を現在的・論理的に解明し、真理を客観的に実証していくことがまさしくわたしの宗教的使命とするところである。
わたしはイエスの神性を世界の人々に客観的に証明する唯一の方法は、処女降誕説の実証と、天上の異変(マタイ伝二章ー東方の博士たちが東の方でメシア誕生を告げる星を見たので拝みに行ったこと、東方で見たその星が博士たちを先導し、ついに幼子のところまで導き、その上で止まったこと、そして彼らは幼子をみて、ひれ伏して拝んだことなどを伝える、空に輝く不思議な星の物語)であると考えている。

(※)その最大の理由として、ナザレのイエスについて書いている、新約聖書のマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4福音書であるが、その中で最も古く書かれたマルコの福音書ですら、イエスの死後40年以上経過した後に、イエスと接触した人々によって言い広められた口伝や、わずかであるが文書化された伝承などを集めて、編纂されたものである。もちろん、マルコが主観的見解をもとにまとめたものなので、ナザレのイエスについては歴史的事実でない部分が多々含まれている可能性が非常に高いものと思われる。

(付録)絶対的普遍的真理の存在について
皆さんは、絶対的普遍的真理、すなわち、いつでも、どこでも、だれにでも当てはまる真理や価値といったものがこの世に存在すると考えているだろうか? この問題でまさに大論争が巻き起こったのが、かの古代ギリシャである。ソクラテス、プラトン、アリストテレスといった哲学者(真実の知恵を愛し求める者)のグループと、ソフィストと呼ばれる人々(青年たちに報酬をもらって、弁論術等を教授し、各地を渡り歩いた職業的教師たち)のグループの間で討論が行われた。
ソフィストを代表するプロタゴラスの有名な言葉が、「人間は万物の尺度である」である。すなわち、「社会の慣習や道徳は、時と場所によってさまざまであり、また法律は国家がどのようにでも決めうるものであり、別にそれらを貫く絶対的真理のようなものはない。すべての判断の基準は、結局、人間にある。ゆえに、博識、雄弁、経済力、情実などによって出世していくことが賢明である」というのがソフィストたちの一般的な考え方であった。
それに対し、ソクラテスらは、このようなソフィストたちの主観的・相対的な価値基準による生き方こそが、社会を混乱に陥れるものであると断じ、いつでも、どこでも、だれにでも当てはまる真理や価値を発見することによって初めて、この世界に恒久的な平和をもたらすことが出来ると主張した。実際には、その真理や価値そのものがいったい何であるのかをソクラテスらは見出すことはできなかったが、それを追求してやまない精神こそ最も大切な生き方であるとした。
英国の欧州連合(EU)離脱や米国のトランプ大統領の誕生によって、国際情勢の先行きの不透明さがいっそう増していく中にあって、絶対的普遍的真理の存在については、「3つの基本的価値観の特徴」の項目を御覧ください。