社会保障制度改革国民会議と私見

2012年8月成立の社会保障制度改革推進法に基づき、内閣に設置され、有識者が社会保障の将来像を議論している「社会保障制度改革国民会議」。自民、公明、民主の三党合意に基づいて創設され、2012年11月末にその初会合が開かれた「社会保障制度改革国民会議」が、今後の社会保障制度のあり方について、2013年8月21日の設置期限までに取りまとめを行うことが義務付けられている。

(第1回)2012年11月30日
◯15名の委員紹介・清家篤(会長)、遠藤久夫(会長代理)、伊藤元重、大島伸一、大日向雅美、権丈善一、駒村康平、榊原智子、神野直彦、永井良三、西沢和彦、増田寛也、宮武剛、宮本太郎、山崎泰彦
◯会長の選任、会長代理の指名、会議運営規則の決定
◯政府側からの挨拶
◯事務局からの説明
◯意見交換 など

(第2回)12月7日
◯医療・介護・年金・子育ての4分野で現状と検討課題を討議
◯主に4委員(医療分野・遠藤久夫、介護分野・山崎泰彦、年金・神野直彦、少子化・大日向雅美)からの報告及び意見交換
(第3回)2013年1月21日
安倍内閣発足後、初めての開催であり、冒頭総理が出席して、これまでの議論を踏まえた上で、意見交換を行うとともに、今後の進め方について議論が行われた。
(第4回)2月19日
日本経済団体連合会・斎藤勝利副会長・社会保障委員会、藤原清明経済政策本部長
経済同友会・伊東清彦常務理事、篠塚肇政策調査第2部長、金山和範政策調査第2マネージャ
日本商工会議所・中村利雄専務理事
日本労働組合総連合会・菅家功副事務局長、花井圭子総合政策局総合局長
(第5回)2月28日
全国知事会、全国市長会、全国町村会 財政制度審議会の関係者
(第6回)3月13日
甘利社会保障・税一体改革担当大臣を含む8名の関係閣僚も参加し、これまでの議論の確認及び「基本的な考え方」の整理に向けた議論
(第7回)3月27日
四病院団体協議会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全国老人福祉施設協議会、民間介護事業推進委員会
(第8回)4月4日
健康保険組合連合会、全国健康保険協会、国民健康保険中央会、全国後期高齢者医療広域連合協議会(各団体を交えての議論)
(第9回)4月19日
第1回~第8回までの主な議論、11委員からの提出資料、高橋国際福祉大学大学院教授からの提出資料、これまでの国民会議における指摘に関する資料、日本医師会からの提出資料
(第10回)4月22日
政府側からの挨拶、これまでの国民会議における議論の整理(医療・介護分野)(案)
(第11回)5月9日
政府側からの挨拶、委員からのプレゼンテーション等及び議論(少子化対策分野)
(第12回)5月17日
政府側からの挨拶、これまでの国民会議における議論の整理(少子化対策分野)(案)
委員からのプレゼンテーション等及び議論(年金分野)
(第13回)6月3日
政府側からの挨拶、これまでの国民会議における議論の整理(年金分野)(案)
伊藤委員の提出資料(経済財政の視点からの社会保障改革)
(第14回)6月10日
政府側からの挨拶、2巡目の議論(医療・介護分野)、意見募集の結果概要
(第15回)6月13日
政府側からの挨拶、2巡目の議論②
(第16回)6月24日
政府側からの挨拶、2巡目の議論③、今後の進め方
(第17回)7月12日
政府側からの挨拶、報告書のとりまとめに向けた議論
(第18回)7月29日
政府側からの挨拶、報告書のとりまとめに向けた議論
(第19回)8月2日
政府側からの挨拶、報告書のとりまとめに向けた議論
(第20回)8月5日
政府側からの挨拶、報告書(案)について

[社会保障制度改革国民会議の報告書のポイントは?]
高齢者に手厚い現行制度を見直し、今後はすべての世代が経済力に応じて負担し、支え合う「全世代型」の社会保障に転換するように提言したのが特徴だ。
高齢化がさらに進み、医療や介護などのサービス給付が増え続けると、安定した制度運営は難しくなる。そのため、介護保険で所得が高い高齢者の自己負担を引き上げたり、70~74歳の医療費窓口負担を1割から本来の2割に変更したり、高齢者に応分の負担や給付の削減を求める施策を打ち出した。
一方で、育児休業中の経済支援拡充など、対策が不十分と指摘されていた若い世代の支援に目配りしたのもポイントの一つ。
[社会保障制度改革国民会議の報告書の提言は今後どうなるのか?]
政府はまず、報告書を踏まえて改革の手順などを定めた法案の骨子を8月21日に閣議決定し、今秋の臨時国会に法案を提出する。具体的な制度設計は秋以後、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論し、法改正などを順次進める予定だ。

(8月18日付の聖教新聞より)

政府は21日、社会保障制度改革の工程表と位置付ける「プログラム法案」の骨子を閣議決定した。若い世代向けに少子化対策を盛り込む一方で、高齢者や高所得者には給付費の抑制策や負担増で協力を求めた。医療は2014年度から70~74歳の窓口負担を段階的に上げ、2015年には介護サービスの自己負担を増やす。ただ抑制策は全体に小粒で、年金では具体的な改革を先送りしている。

社会保障プログラム法案骨子の概要
主な項目 法案提出実施メド
医療 70~74歳の窓口負担を2割へ 14年度以降段階実施
高額療養費の負担上限上げ 14年度にも実施
医療提供体制見直し※ 14年通常国会に法案
大企業健保の負担増※ 15年通常国会に法案
国保の都道府県移管※ 17年度までに実施
高齢所得者の保険料上げ※
介護 軽度者へのサービスを市町村に※ 14年通常国会に法案
高所得者の自己負担増※
特別養護老人ホームへの軽度者の入所制限※
年金少子化対策 年金支給開始年齢の引き上げ※ 中長期で検討
待機児童対策など 14年度まで
(注)※は法律改正が必要
(8月22日付の日経新聞より)


社会保障制度改革国民会議の審議のための意見募集(提出締め切りは5月15日必着)に「杉本尚司の意見」として下の□部分を送りました。結果は残念ながら、何の音沙汰もありませんでした。

「杉本尚司」の意見

社会保障費、とりわけ、医療費と介護費の歯止めなき膨張を少しでも抑えていくには、国費の無駄ともみなされ得る終末期延命治療と終末期胃ろうの2つについて、もっとオープンに国民的議論を巻き起こすべきだと私は思う。また、尊厳死法制化の是非についても、同様の議論が必要だろう。さらに、これらの問題と平行して、一定の条件のもとでの自由死(断食自然死や自己安楽死など)の権利と国によるその権利の保障についても国民の間で議論されることが望ましい。

※社会保障制度改革国民会議は、2013年8月6日に報告書の取りまとめを行ったが、設置期限の同年8月21日に廃止され、その後、同会議に関する業務及び行政文書は、内閣官房社会保障改革担当室に引き継がれている。